1999 アビタ戸祭

近隣住戸との関係をつくる ミニ開発の新たな手法

この計画は元々約1000㎡あった1つの敷地の中に複数の賃貸用戸建住宅を建設したものである。いわゆるミ二開発の一種であるが、ここでは従来の開発形式に見られる不合理な部分を見直して、建物のつくられ方によって生まれる新たな住環境を見つけていこうと試みた。

敷地を分割する際に留意した点は、そこに建物が配置されたときに、隣接する周辺環境に対して悪影響を与えないことと、すでにあった屋敷林をできるだけ残すことであった。結果として、敷地北側に幅約4mのアプローチ道路を設け、それに対し約10mの間口間隔で4つに分筆することにした。こうして敷地は一旦分割された状態となったが、建築の設計においては1000㎡の領域を一体のものとして計画を進めた。

まず地面から約2.7mの高さに、1枚の人工地盤(プラットフォーム) を、既存樹木を避けながら敷地全体にわたって設置した。さらにこのプラットフォームの上に、構造上1階の部分と分離した4つの小さな木造建物を、互いに距離をあけながら配置した。これらの建物によって区切られた屋外エリアは、それぞれ各住戸専用のオープンテラスに対応している。1階は、各住戸すべてにわたり北側ピロティ部に玄関ポーチと駐車、駐輪スペースを設け、さらに既存樹木を中心に2つの中庭(パティオ)をつくった。全体として、建蔽率及び容積率が共に50%以下という、比較的ゆったりとした住環境が敷地全体にわたって展開している。

2階のオープンテラスは、形式上は各住戸のためのプライベートテラスであるが、居住者の住まい方次第によっては住戸相互のコモンスペースとしての利用が可能なように、隣の住戸への連絡動線としても機能するようになっている。この関係は1階の木製ルーバーで囲われた中庭と南庭のエリアでも同様である。

こうした構成をとった背景には2つの理由がある。1つは、建築あるいは土地が隣接しあい集合化したときの空間上のメリットを最大限に生かすことを目指したことと、もう1つは、近隣同士の人間関係の形成を建築自体が強引に主導するのでなく、そのためのタネを建築内外の各所に蒔いておくことぐらいの適度さが、居住者に意識的な社会的ライフスタイルの選択を促すことになってよいのではないか、という我々の認識からである。

2階平面図
配置兼1階平面図