2001 八丁堀のスリットハウス

都心の隙間に住空間を構築する

東京都心の商業地域に小さな住環境を仕掛けた例である。タワーマンションと呼ばれる都心高層マンションが全盛の現在、その足元には今もなお間口の狭い低層住宅がひしめく小さな街区がいくつも残っている。都市に住まう人々の全てが眺望の良い高層集合住宅に暮らしているわけではないし、また人々はそうしたスタイルだけを追い求めているのではない。

敷地の間口幅がきわめて狭く、プライバシーや日照の確保が困難なエリアの中で、快適で魅力的な住環境を獲得するために、ここではまず建物の縦断面のレイアウトを練ることから設計を始めた。

狭い土地とはいえ、建物は地面と直に接することができるし、頭上には青空や星空も残っている。また視線の高さ関係によって、街路のヴィヴィッドな風景を室内に取り入れることもできる。

こうした利点の1つひとつを住宅の断面に対応させていくことで、21世紀の東京長屋(ローハウス)としての新たなタイポロジーを浮かび上がらせることができるはずである。

なおこの建物は、小さな敷地の集合体を1つの大きな敷地にまとめることのスケールメリットに対して抵抗できずに、竣工10年後に消滅した。

2階平面図
1階平面図
床下収納階平面図
西-東断面図
南-北断面図
断面詳細図
配置図