2003 台形面の家

環境を纏わせるガラスのファサード

44坪のフラットな敷地上に、家族4人が住むための家を計画した。西側の狭い道路を挟んで反対側に広がる雑木林は、実は隣の民家の広大な庭の一部であり、その意味でこの町の歴史的面影を残すものでもある。この豊かな景観を、単に部屋の窓から借景として観賞するだけでなく、建物の外壁全体にその風景を映り込ませることによって、日々刻々と変化する豊かな緑を建物に<纏わせる>ことを試みた。すなわち、濃い茶色に塗った構造用合板の上に透明ガラスを通気層を設けて固定させることで、ガラスという素材のもつ「透過/反射」の性格が同時に現象するような立面をつくった。そこでは、自然樹林の複雑なパターンと半人工的な合板の板目模様が重なり合う。さらに、建物の裏側(東側)の隣地内にも豊かな樹林が残存しているが、その樹林とファサードに映り込んだ樹林とが視覚的に連続する瞬間に、建物のアウトラインが消失し全体が透明化するような効果も意図している。

建主からの要望の1つとして、<音楽室>を設けてほしいことがあった。それは主にピアノやマリンバのレッスン教室として使用するので、玄関からの動線的な独立性と屋外に対する防音性を必要とすると共に、反対に居間や食堂と連続することでホームコンサートを開けるようにもしたい、ということであった。

展開する空間が有効ではないかと考え、また敷地の形状とそのスケールがその形式を可能にさせるものであったので、センターコア型の建物プランとした。

まず、水回りの諸室や階段などを納めたコア空間の大きさを設定し、そのコア自体の外形面と建物全体の外壁面との距離が、居住するための場としてうまく機能するように、コアの位置を決めた。

玄関土間と2階のテラスをダイレクトに結ぶ<第2の階段>を設けた。この階段の主用途は、海水浴から水着で帰宅した子どもらが直接浴室や個室へ向かうためのものであり、さらに玄関や1階コア内のトイレや倉庫に採光や通風をもたらす穴でもある。建物全体の構成から見ると、コア内にねじれて位置する2つの階段があることで、テラスを含めた諸室相互の動線的ヒエラルキーがなくなり、形態的には単純コア型プランでありながらトポロジー的には多中心型のリゾーム平面、すなわち室内のどの場所に立っても2つ以上の経路で他の諸室にアクセスできるプランとなり、そのことで住まいとしての使われ方の自由度を意図した。

2階平面図
配置兼1階平面図
北-南断面図
南-北断面図
西-東断面図
西立面図
断面詳細図
矩計図