2005 バレエの家 I

大小多数の空間パーツを立体的に繋ぐ扉と窓

最寄りの私鉄駅からほど近い約200㎡の矩形敷地に、バレエスタジオを含む兼用住宅を計画したものである。施主は元バレエダンサーの指導者であり、スタジオの空間規模や環境、付属する諸室などについて一定の水準を求めた。また、住居部分に対しては、2世帯の自立した住まいとバレエ関係者と直接応対できるスペースなどを要望した。こうした複雑なプログラムを解くために、ここではまず一種の空間モデル、すなわち1つの大きな箱を立体的に空間分割して小さな立体パーツをつくり、各パーツどうしの接触面に穴を開けていくという図式の中から設計を進めた。

外部からの出入り口は2箇所ある。1つは路側に設けたスタジオの玄関で、地階のスタジオ、2階のリハビリ室や診察室、さらに3階の休憩室を階段で結ぶ。もう1つは東側に設けたプライベートな玄関で、2階及び3階の各住戸へと至る。この公私2つの動線は、2階の階段室や納戸、さらに3階の前室や屋上テラスなどを介して互いに連絡が可能となっている。また公私に分割されているこの両空間は、建物中央に設けられたスリット状の吹き抜け空間を介して、視線的に繋がっている。

最大の空間パーツであるスタジオ(7m×12m×高さ4m)は、周辺住宅地への防音対策のため半地下にあり、コンクリートの壁で囲まれている。レッスン中は(音響の問題で)窓の開閉が不可能なので、スタジオ中央部の天井に開けられたスリット状の吹き抜け空間を通して3階テラスから換気する。リノリウムが敷かれた床の下には、足への衝撃を和らげるためのバネが設置されており、床面と壁面との隙間は床下の空気の吹き出し用スリットとなっている。なおスタジオの無柱空間は、4つの鉄骨無垢柱とトラス梁を挿入することで成立している。

西-東断面図
南-北断面図1
西-東断面パース
南-北断面図2
地階平面図
1階平面図
2階平面図
3階平面図
配置図