
用途 併用住宅(住宅+診療所+倉庫)
場所 長野県松本市
構造規模 木造2階建
基礎形状 松杭柱状改良の上ベタ基礎
空調形式 床下ダクト方式個別式エアコン
敷地面積 1328㎡
建築面積 115㎡+103㎡+47㎡
延床面積 215㎡+195㎡+85㎡
竣工年 2022年
意匠設計 アトリエ・アンド・アイ岩岡竜夫研究室
構造設計 OUVI横尾真
設備設計 岡江正
施工 岡江組
掲載誌 新建築2023/9
受賞等 松本市最優秀景観賞(2023)






分棟形式による建築と周辺環境の新たな関係
松本城公園の南側に隣接する道路の拡幅工事に伴う、診療所付き戸建住宅の移設建替計画である。行政から提供された建替用地は、従前の敷地と一部重なっていたため、松本城天守への素晴らしい眺望と、旧家屋の庭のランドスケープをそのまま確保することができた。敷地の近辺は、お城の外堀と女鳥羽川に挟まれた、いわゆる三の丸エリアと呼ばれ、自立した文化都市を目指す城下町の中心部としての再開発が今後望まれる地域である。
皮膚科を専門とする3代目の開業医である施主は、新たな診療所と住まい、そして絵画や書物のための収蔵庫を要望した。本計画では、新たな敷地内に3つの建物(療所棟、住居棟、倉庫棟)と4つの外部空間(中庭、前庭、南庭、駐車スペース)を分散的に配置させている。3つの建物は全て2階建で、やや縦長の壁のようなヴォリュームとし、相互に隣接させることでその内側に周辺からブロックされた中庭を形成している。このスペースは視覚的には外側から閉ざされているが、通りすがりの人々に開放されており、そのため建物の中庭側への開口部の大きさをやや抑えている。中庭(コートヤード)というより小広場(スクエア)に近く、街中の小さなコアあるいは現代版桝形として、様々なイベントに活用される予定である。
さらにこの3つの建物は、来客動線と事務動線に挟まれた診察室のある診療所棟、前室に挟まれた居室のある住居棟、廊下のない倉庫棟、のように、居室と動線の組み合わせの類型により構成するとともに、455mmモデュールによる同一幅で統合した。
各棟の内壁面の各所に貼られた有孔パネルは、室内の音環境を制御するとともに、展示壁としても機能する。一方、居室を仕切る壁面に帯状に縦に貼られた455mm幅の有孔壁は、建物の床下を流れる暖気を2階居室へ繋ぐ垂直ダクトの吹き出し口としての役割を担っている。また住宅棟の居室を取り巻く前室空間は、居室の環境性能向上のためのバッファーゾーンでもある。






