1999 対屋の家

建て替えのプロセスを計画する

3世代が同居する農家のための住宅である。設計に先立ってまず重視した点は、計画対象であるこの敷地全体が、8人の住まいであると共に、農業を日々継続して営むための拠点でもあることから、日常生活と生産活動に支障をきたさないためのスムーズな建て替えの順序をどう組むかであった。具体的には、まず車庫として使われていた旧倉庫の北半分を解体し、 そこに新しい母屋を建て、次に旧母屋を解体し、そこに新たに倉庫兼作業場を建てた。最後に旧倉庫を解体してそこを庭とした。最終的には、広い中庭を中心として北側に母屋、南側に倉庫がほぼ並行して対置するプランとなった。各々の建て替えは短い農閑期に進められ、トータルで 1年半の過程であった。

母屋である住宅本体は、敷地北側に沿って東西いっぱいに建つ。建物の外形は、東西間口約23m、南北奥行約5.8mの細長い単純な箱型である。箱を支える架構として1.8m間隔で柱梁を門型に連ね、外壁及び北側収納部の間仕切り壁が横揺れに抵抗している。建物の外壁は、東西北面を断熱サンドイッチパネルによって閉鎖的に覆い、対照的に開放的な南壁面は全面板張りとして中庭の景観に寄与している。また南面には1.4m幅の軒先が連続して、一部ベランダを支えている。一方建物内部は、敷地の高低差(約1.2m)を吸収するかたちのスキップフロアとなっている。1階に個室群と浴室、2階に食堂と居間、東側中間階に玄関と広間(和室)がそれぞれ配され、相互のフロアは1/8勾配のスロープによって連結されている。個室を除いた各スペースは、床の高さと素材によってのみ区切られており、ひとつの立体空間の中に多様な場所が緩やかに展開する構成となっている。

夏冬及び昼夜の寒暖差が激しいこの地域にあって、安定した室内環境をより経済的に維持するための対策として、この住宅では、高気密化・高断熱化を前提として設計を行った(C値=0.82㎠/㎡、Q値=l.77kcal/㎡)。気密性能を上げることで、床下や屋根裏を含めた室内空気の流れをコントロールすることができ、気積の大きな空間全体の温度は季節を通じてほほ一定に保たれている。また熱エネルギーは全て電気でまかなわれ、屋根面には太陽光発電パネル(約5kw)が並べられている。

東立面図
西-東断面図1
南-北断面図1
西-東断面図2
南-北断面図2
配置図

建替えプロセス

1998年11月(従前の配置)
1999年11月
2000年3月
2000年4月(現在の配置)